ETHICS for YOUTH
2025年秋号


[評]パワーのある作品です。8ヶ月が具体的です。マフラーに込めた熱量を「マフラー」と言わずに表現しています。


[評]「二人」でないのは意外。孤独と言わずに孤独を表現できています。「かな」は古語。「〜だなあ」と心に深く感じることです。


[評]「数Ⅲ」の授業で定義が出てきているのか。「虹」は移ろいやすいもの。「友達は定義できない」と通じ合います。






短歌も俳句、川柳、つぶやきも少ない文字数で表現する文芸です。そのとき役に立つのが「省略」という技法です。言わなくてもわかる言葉は言わない。入選作のひとつを例にとると「マフラー」とは言っていません。「フリンジ」や「編む」があるのでマフラーだと、読者は想像がつくからです。ときどき文字数を減らすためか、無理な「節約」をしている作品があります。「泳ぐのが嫌い」を「泳ぐ嫌い」としてしまうような例です。これは単なる文法破り。読者に共有してもらえません。文法は守り、かつ読者の立場で「これで想像できるだろうか」と考えて、作者のひとり合点でない効果的な「省略」をめざしましょう。
コメンテーター
エッセイスト
岸本葉子さん
神奈川県生まれ。食や暮らし、旅のエッセーのほか、俳句にまつわる著書も多数。『俳句、はじめました』『NHK俳句 岸本葉子の「俳句の学び方」』など。

イラスト:髙田茂和
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2025年秋号(No.11)に掲載した記事に加筆したものです。
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