
鏡を見たり、写真を撮ったりする時、容姿について考えたこと、ありませんか? 例えば、「もっとかわいくなりたい」「かっこよくなりたい」。それはみんなが持っている、とても自然な気持ち。特に、思春期には強く表れます。思春期~青年期は、アイデンティティーを確立する時期で、まだ自分を確立できていない自信のなさが背景にあるためです。「今は特に気になる時期なんだ」と客観的に見ることが大切です。

健康な人が持つ容姿に関するこだわりは「醜形恐怖心性」といって、メイクや肌の手入れなどで対処できます。そのこだわりが強くなると、自分の体の一部が「変だ」「醜い」と思い込んで、日常生活に影響を与えることも。例えば、学校へ行けない。ご飯が食べられない。眠れない。このような症状がある場合は、「身体醜形症」という病気の場合があります。自分では気づきにくいので、普段通りの生活ができなくなった時は、スクールカウンセラーなどの専門家に相談して、一人で抱え込まないようにしましょう。


ある調査で、「自分のいるグループの友だちに迷惑をかけたくないから、容姿を良くしなくちゃいけない」と考える人がいることが分かりました。学校にも「ルッキズム」の影響が及んで、容姿によるスクールカースト(学校内で自然に発生する上下関係)があることも分かっています。でも、それは学校という狭い世界の中でのルールで、決して当たり前なことではありません。これから高校、大学、社会へと進むにつれて世界は広がり、視野も開けます。大切なのは、自分の視野を広げること。学校の外に目を向けてみると、ルッキズムという偏見に振り回されなくなると思います。


容姿に悩むようになったきっかけの多くは、SNSやテレビ、雑誌、アイドルなどを見て、自分に劣等感や自己否定感を持ち始めること。中でも、ここ数年で最も影響力が大きくなったのがSNS。画像加工アプリを使った“完璧な外見”と自分とを比べてしまうからです。SNSを見続けていると、世の中には完璧な人があふれているように錯覚してしまいがちですが、そこに反映されているのは、現実のほんの一部。そのことをまず自覚し、他者と比べることをやめましょう。SNSと距離を取ることは、自尊感情の回復に役立ちます。


小顔で色白、カリカリにやせている。最近の日本では、そんな見た目が流行っていて、そこからはみ出すと不安になる人もいるようです。けれど、美しさの基準は、文化や地域、社会的価値観などで異なるもの。画一的な美の基準なんてありません。行き過ぎたルッキズムで傷つく人が増えた欧米では、ありのままの自分を受け入れる「ボディポジティブ」というムーブメントが起こりました。その影響は日本にも及び、広告などには多様なモデルが登場するようになっています。皆さんも、自分のチャームポイントを見つけて、自分なりの美の価値観を持つことが大事です。


自分の内面や性格、行動、能力などに価値を見いだして、自己受容感を高めることが大切です。そのためには、自分に優しくなり、自分をほめてあげるといいですね。例えば、「優しい」「面白い」「あいさつができた」「英語が得意」…。小さなことでもほめるうちに、自分の価値や魅力に気づいて、自分に自信が持てるようになります。すると、自分を大切にできるので、容姿の悩みを減らすことにもつながります。
用語解説
【ルッキズム】
外見や容姿を基準に人を評価すること。容姿による差別的な態度や社会現象を指すことも。
【身体醜形症(しんたいしゅうけいしょう)】
自分の容姿について過度に心配したり、強い不満を持つ病気。
【醜形恐怖心性(しゅうけいきょうふしんせい)】
健康な人が持つ、容姿へのこだわり。日常生活に支障をきたすことはない。
【ボディポジティブ】
ありのままの自分の身体を受け入れて愛すること。他人が押しつける「理想の体形」や「完璧な外見」に縛られず、自分自身をポジティブに捉えます。
用語解説
【ルッキズム】
外見や容姿を基準に人を評価すること。容姿による差別的な態度や社会現象を指すことも。
【身体醜形症(しんたいしゅうけいしょう)】
自分の容姿について過度に心配したり、強い不満を持つ病気。
【醜形恐怖心性(しゅうけいきょうふしんせい)】
健康な人が持つ、容姿へのこだわり。日常生活に支障をきたすことはない。
【ボディポジティブ】
ありのままの自分の身体を受け入れて愛すること。他人が押しつける「理想の体形」や「完璧な外見」に縛られず、自分自身をポジティブに捉えます。


「きれいになりたい」「かわいくなりたい」「カッコよくなりたい」。そんな思いは誰もが持っています。特に、まだ自分を確立できていない10代のうちは、誰かと比べて、自分の容姿に悩んでしまうことが多いものです。
私自身、容姿のことで悩んだことがありました。その悩みがきっかけとなって、今の研究テーマに取り組むようになったのです。
容姿のことで悩んだ中高大時代
中高生時代はダンス部に所属していました。ダンスは大好きでしたが、練習するのは大きな鏡の前。常に鏡を見ているので、どうしても自分の体形を他人と比べてしまいます。背の低い私は、長身の先輩が踊るのを見て、「背が高いと、手脚も長いから、ダンスもきれいに見えていいなあ」と、うらやましく思っていました。
容姿に自信はなかったけれど、その気持ちはほったらかしで、特に何もしませんでした。強いチームではなかったけれど、ダンスが楽しくて夢中になっていたので、深刻に悩んでいる時間がなかったんですね。
大学2年の頃になると、ひどい肌荒れに悩まされました。失恋をしてホルモンバランスが崩れたことが原因でした。そんな時、指導教官から「醜形恐怖症」という病気があると教えられたのです。「容姿の悩みが心の健康にどのような影響をもたらすのか」ということに関心があったので、興味が湧いてきました。私のような経験は特別なものではなく、多くの人が、何かしらの形で容姿に関する不安を抱えている。心理学を専攻していたので、研究テーマを醜形恐怖症など、容姿に関する心理や社会的な要因を探求することに決めたのです。
悩んでいた肌荒れも、研究テーマが見つかって前向きな気持ちになり、夢中で取り組んでいるうちに、いつの間にか治っていました。
「自分だけじゃない」と知ろう
容姿に関する調査・研究って、どんなことをするの? と思いますよね。方法はシンプルで、調査用紙を配布して回答してもらい、その結果を統計的に分析・検討していきます。そこからはさまざまなことが浮かび上がってきますが、中高生の皆さんに伝えたいのは、「たくさんの人が自分の容姿に悩んでいる」ということです。
あなただけではありません。みんなも同じように悩んでいるんです。そのことを知って、“自分だけ”と思い込まないようにしてほしいですね。
第一印象は確かに大切です。けれど、もっと大切なことがたくさんあります。友だちと笑ったり、話が盛り上がっている時のことを思い出してください。相手の容姿のことなんて、お互いに気にしなくなっているはずです。

容姿の悩みにとらわれてしまったら
中には「友人関係がうまくいかないのは、容姿のせい」と思い込んでしまう人もいます。そんな時は、カウンセリングを受けたりして「第三者の視点」を取り入れるといいですね。
例えば「不細工だから無視された」という思い込みが、実は「相手がほかのことに気をとられていたから」など、ほかの理由だったことが分かったりします。違う捉え方をすることで、思い込みに気づき、考え方を変えられると思います。
学校内のスクールカウンセラーに相談してみてください。校内では相談しづらいという場合は、外部のカウンセラーでもかまいませんが、有料(通常は6,000円ほど)になります。心理学専攻のある大学の心理臨床センターなど、安価(3,000円くらい)に相談できるところもありますから、探してみるといいでしょう。
多くの人が容姿に関して悩んでいることを広く知ってほしくて、『きれいになりたい病』という本を書きました。そこで公開しているデータを見てもらうと、多くの人が容姿のことで悩んでいる実態が、リアルな数字で分かります。「知る」ことで、不安が少しでも解消し、前向きな気持ちになってくれたらうれしいです。
(構成:編集部)
大村美菜子

「きれいになりたい病」
大村美菜子(風鳴舎)
大村美菜子さん
東京未来大学こども心理学部 心理専攻講師。博士(心理学)。臨床心理士。公認心理師。醜形恐怖心性の専門家。容姿の悩みが心の健康に与える影響、容姿に関する不安や悩みが生まれる要因、それらが人間関係に及ぼす影響について探求している。著書に『きれいになりたい病 これでわかる醜形恐怖心性』などがある。

写真:石山勝敏 イラスト:村澤綾香
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2026年春号(No.13)に掲載したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。



























