[ 特集 ]ともだちの話をしよう

悩みやモヤモヤは分解ぶんかいして整理してみましょう

 小学校の頃は、そうでもなかったのに、中学生くらいから、クラスや部活で、友だちからどう思われているのか、気になるようになった。そんなふうに感じたことはありませんか。

 年齢が高くなるに従って、学校の中や部活で友だちの態度や行動に敏感になるのは自然なこと。自分がどう見られているか不安になったり、友だちとの関係でモヤモヤしたり悩んだりといったことも増えてきます。

 けれど、友だちとのことでモヤモヤが続くのはつらいもの。はっきりしたいじめや暴力がなくても、「無視されているのかな」「ばかにされているのかな」「悪口を言われているみたい」という気持ちをがまんしていると、毎日がつらいことばかりに思えてきてしまいます。

モヤモヤを書き出してみよう

 もし、あなたの心の中に悩みやモヤモヤがあるなら、まずは、自分の身に何が起きているのか、整理することから始めてみましょう。

 ①ノートを用意して、何にモヤモヤしているのか、ストレスを感じた場面や「できごと」を書き出してください。

 ②次に、その時、どんな気持ちがしたのかを書いてみましょう。この時、なぜ起こったのかとか、誰が悪いのかといった原因やきっかけは考えないようにします。

 ③最後に、その結果「どうなった」のかを書いてみます。これは気持ちでも行動でもかまいません。必ず自分のことを書くようにします。

 順を追って整理してみると、自分に何が起きているかが見えてきます。そして、友だちに対するイヤな気持ちやモヤモヤは、何かの「できごと」とセットになっていることに気づくでしょう。モヤモヤは、できごととともに、あなたの中に入ってくるのです。

がまんはしない

 今の自分の状況が見えてきたら、モヤモヤが起きる前の「元々の自分」に近づけるようにしてみましょう。

 ネガティブな感情が浮かんだら、「別にダメな人間じゃないし」と軽く受け流すようにしてみたり、つらい時は自分がリラックスできることをしてみてください。

 でも、そうして乗り越えられるのは、つらさのレベルがあまり高くない時だけです。「学校に行きたくない」「教室に入るのがしんどい」など、つらさが大きい時は、がまんは禁物きんもつです。自分や友だち同士で解決しようとせず、信頼できる大人に相談してみましょう。

モヤッとしたりイヤだなと思ったら

今の状況を整理してみよう!

モヤモヤの原因となった「できごと」を書き出してみる
例:あいさつをしたのに無視された。SNSやLINEに返事がなかった。など

起こったことに対する自分の気持ちを書き出してみる
例:無視されて悲しかった。LINEに返事がなくて、何か自分が悪いことをしているのかと思った。など。

自分に起きた変化を書き出してみる
例:学校に行くのが苦しくなった。友だちと連絡を取るのが怖い。教室にいるだけでドキドキする。など。

◎つらい状況が続くなら、まずは身近な大人に相談しましょう。

自分の状況が見えてきたら

・信頼できる周りの人に相談する
・自分ひとりでがまんしない

自分を大切にしよう

 理想的な相談者は、身近な大人。例えば、家族、先生、スクールカウンセラーなどです。ポイントは、自分の話をよく聞いてくれる人、自分の意見、結論を押し付けない人、あなたの気持ちを否定しない人です。周囲を見回して、前に感じが良かったなという人に話しかけてみてください。注意してほしいのは、実際に会って話を聞いてくれる人であること。どんなに親切でも、SNS等で知り合ったとくめいの人は危険です。

 大切なのは、自分のことをダメな人間だと思わないこと。そして、自分を大切にすることです。いろいろな人たちの力を借りながら、自分を守っていきましょう。

 10代の皆さんにとって、友だちはとても大切な存在だと思います。だから、「友だちから無視される」、「バカにされている気がする」、「嫌われているかもしれない」といったモヤモヤがあると、とてもつらいですよね。

 怖いのは、そうしたつらい思いを抱えているうちに、「私が悪いからいけないんだ」とか「自分は価値のない人間だ」と感じてしまうことです。何度も嫌な気持ちになったり、苦しい経験をしているうちに、「自分を大切にしたい」という気持ちが薄れてしまうことがあるのです。

 そういう時は、上の記事に書いたように、まずは、自分の身に起きたことを整理してみることをおすすめします。その上で、今、つらいなと思うなら、勇気を出して、身近な大人に相談してみてください。

 絶対にやってはいけないのは、自分を責めることです。「私、何かよくないことをしたのかな?」とか「自分が劣っているからバカにされるのかな」と、自分側の理由をあれこれ探さないでください。あなたのことを無視する人がいたら、無視した人が悪いし、見下してくる人がいたら、見下した人が悪いのです。

 友だちは大切ですが、一番大切なのは自分自身です。そのためには、自分を守る行動を取ることが大切です。無視する人、バカにする人からは離れて、無視しない人、バカにしない人と一緒にいるようにしてみましょう。

 どうしてもつらくて、学校に行けない時は休んでも構いません。話しやすい大人に相談して、つらいことを聞いてもらいましょう。

 思春期は人間関係の悩みを抱えやすい時期です。友だちとの関係で、悩んでしまった時には、「一番大切なのは自分」だということ、「自分は守られるべき存在だ」ということを、まず思い出してください。

井上いのうえゆう
精神科医(子どものこころ専門医)。1998年岐阜大学医学部卒業。社会福祉法人日本心身障害児協会島田療育センターはちおうじ診療科長、社会福祉法人青い鳥横浜市南部地域療育センター所長、東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授などを経て、2021年福島県立ふくしま医療センター こころの杜副院長。著書に『10代から身につけたいギリギリな自分を助ける方法』『学校では教えてくれない 自分を休ませる方法』など。

写真:石山勝敏 イラスト:藤 美沖

※この記事は『ETHICS for YOUTH』2024年春号(No.5)に掲載した記事に加筆したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。