ライフデザインとは、将来なりたい自分を思い描き、その実現方法を考え、取り組んでいくこと。
自分には関係のないことと思ってはいない?
「こんな自分になりたい」と想像することから始めてみよう。
福祉の仕事を選んだ理由
僕は今、弁護士資格を持つソーシャルワーカー(日常生活に問題を抱えている人たちにアドバイスや支援をする社会福祉士)として、「自分の居場所がない」と感じる子どもや若者の相談に乗ったり、問題を解決する手助けをしています。
なぜこの仕事をするようになったかというと、僕自身が「自分の居場所がない」と感じていたからです。小学生の時に父が病気になり、今でいうヤングケアラー(家族の世話や介護を日常的に行っている子ども)のような生活になりました。しかも、自閉症で多動の傾向があったり、人とのコミュニケーションが苦手。家庭の悩みは人に話してはいけないように感じ、誰にも話せず、一人で抱えていたんです。
大学に入り、ボランティアで学童保育の仕事を始めたことで、「家庭でも学校でもない子どもの居場所」があることを知り、「将来は福祉の仕事をして子どもたちの育ちを支えたい」と考えるようになりました。けれど、貧困や親の虐待などで苦しむ子どもたちの姿を見ているうちに、「この問題は専門的な立場に立たないと変えられない」と思い、大学とロースクール(法科大学院)のダブルスクールで弁護士の資格を取得しました。
でも、非行少年や障害者などを対象とした福祉専門の弁護士になったものの、法律裁判や少年審判が終わっても、子どもたちには生活をするという現実が待っています。ケアの幅を広げたくて弁護士になったのに、実際になってみると、法律だけでできることには限りがある。そこでたどり着いたのが、今のソーシャルワーカーという仕事。多くの人が学びの支援を受けられるように活動しています。
どう生きるかを考えよう
「君の夢は何ですか?」と聞かれると、ユーチューバーとかプログラマーとか、将来なりたい職業を答える人が多いのではないだろうか。もちろんそれでもいいのだけれど、職業がゴールでないことは知っていてほしい。大切なのは「どういう生き方をしたいか」なんです。
もしかしたら「夢なんてない」と言う人もいるかもしれない。そんな時は、無理に見つけようとしなくていい。「見つけなくちゃ」と焦って考えると、自分で決めたつもりでも、「医者って言えば、親が喜ぶかも」とか、周りの大人の雰囲気に影響された結果を選んでしまう恐れもあります。だから僕は、夢を探している人には、「しなきゃ」はやめよう。「したい」をしよう、とアドバイスしています。
人というのは常に揺れ動いているもの。「夢」はいくつあってもいいし、今日の夢が明日には違うものに変わっていたっていい。一つの夢にこだわって行き詰まったり、苦しむことのないよう、自分の気持ちや感情を大切にしてほしいと思います。
ごきげんなルートを見つけよう
僕は仕事柄、しんどさを抱えている子と接することが多いのですが、今の10代、20代は、うまくいっているように見えても、見えないところで何かしらのしんどさを抱えている子が多いと感じます。そんな子たちに伝えたいのは、時には楽しいことをして笑える時間をつくったりして、しんどさがあってもごきげんでいられる生き方を見つけてほしいということです。
例えば僕は、福祉の仕事とは別に、バイクや写真などの趣味を持っていて、その延長でアニソンDJとしても活動しています。趣味があったおかげで今の自分があると言ってもいいくらい、助けてもらってきました。推し活だっていい。好きなことをして自分を解放する時間を持つと、ごきげんに生きていけます。
多様さとは、自分とは違う人を認め合うこと。しんどいこともあると思うけれど、無理に周りに合わせようとせず、違和感を大切にしながら、なりたい自分を探していってほしいと思います。
教えてくれたのは…
安井飛鳥
千葉県出身。ソーシャルワーカー、弁護士。最近は、年齢によって社会の支援制度の枠からこぼれ落ちてしまう若者を主に支援。仕事を通じて「全ての人がごきげんに生きられる社会」の実現を目指す。アニソンDJとしても活動中。

※この記事は『ETHICS for YOUTH』2023年春号(No.1)に掲載したものです。