ごみ問題を楽しく解決しようと、ビーチクリーンやワークショップなどのイベントを企画している。ユースチームは中高生を中心に活動。
ゴミフェス532(ゴミニティ)https://gomifes532.com/


自然豊かな神奈川県鎌倉市には、環境保護に取り組む人が大勢います。私たちの団体もその一つ。ごみ削減を楽しく体験できるイベントを開いています。そこに集まった子どもたちが、関心を持った問題に取り組み始め、ユースチームができあがりました。
プラスチックごみが海を汚していると知った女の子は、給食のストローを使うのをやめました。その活動は友だちから学校全体へと広がり、鎌倉市は小中学校の給食ストローを生分解性のものに変更。一人の行動が、社会を動かしたんです。気になることがあったら「自分ごと」として考え、行動してみてください。子どもたちが動けば、たいていの大人は協力してくれます。
海岸のごみ拾い活動(ビーチクリーン)
海岸のごみ拾い活動
(ビーチクリーン)
ゴミフェス532が行っている海岸のごみ拾い活動「ビーチクリーン」の様子。参加者はお菓子の袋など、たくさんのごみを拾った。鎌倉では、サーフィンをする人や犬の散歩をする人が、普段からごみを拾っていることも多く、自然を守る意識が強いという。


誰かがやればOK?
自分が出したごみのゆくえ、一緒に考えませんか
埼玉県出身。結婚を機に鎌倉市に移住。「ゴミフェス532」の立ち上げに参加し、代表を務める。「笑顔が増える、ごみは減る!」を合言葉に、イベントを開いたり、SNSで発信したりしている。

ゴミフェス532ユースチーム
春山義之介さん(湘南学園高校2年)





高校でテニス部に入り、弾みにくくなったテニスボールが3カ月で捨てられていることを知り、なんとかしたいと思うように。粉砕したボールをクッションにしようと計画中。
テニスボールに第二の人生を!
テニスボールに
第二の人生を!
中学の3年間、学校まで自転車で通っていたのですが、海沿いの道を走っていて、砂浜にごみがたくさん落ちているのを毎日見ていました。その時は、漠然と「ごみ問題が気になる」ぐらいの感じだったと思います。
高校でテニス部に入り、テニスボールが2~3カ月で弾まなくなり定期的に捨てられていることを知りました。2、3カ月で約700個、1年だと3000個から4000個くらい、僕の学校だけで捨てられている。好きなテニスにもごみの問題があると気づき、どうにか減らせないかと考え始めました。
テニスボールは表面のフェルト部分と中のゴム部分が強く接着されています。調べてみたところ、リサイクルするには素材ごとに分別する必要があるのですが、テニスボールはそれが難しいためリサイクル方法が確立していない状況でした。
さらに調査を進めたところ、海外では、ボールを粉砕してスニーカーの靴底や建材にアップサイクルしている(新たな製品にする)ケースを見つけ、日本でもできないかと考えました。
ゴムの再生を手掛けている企業やプラスチックゴミをアップサイクルする企業に問い合わせたところ、まずは粉砕すること自体にハードルがあると知りました。
粉砕をしていただけそうな施設や企業を探し電話やメールで問い合わせ、断られたり返事がなかったりする中で、小田原にある有限会社吉工さんが試してくれると快く引き受けてくれたのです。高校生の自分の話を聞いてくれたことに驚き、とても感動しました。

快く引き受けてくれた有限会社吉工(神奈川県小田原市)で、代表取締役の宇都宮 哲さんと打ち合わせ。
有限会社吉工 https://yoshikoh.co.jp/

粉砕開始。吉工さんではさまざまなサイズに
粉砕することができ、
今回は3種類の大きさに粉砕してもらった。
粉砕はうまくいき、一つ目のハードルはクリアしたものの、その後これをどう活用しようかというところがなかなか見つからなかったのですが、家族やゴミフェスのみんなと話しているうちに、ふわふわしたフェルトとゴムの弾力をいかして、クッションの詰め物にしたらどうかというアイディアにたどり着きました。
クッション、なかでも野外で使えるアウトドアクッションにしたらどうかと考えていたところに、ちょうどリセイルファクトリーさんが鎌倉でポップアップイベントをやっていました。
リセイルファクトリーは役目を終えたヨットの帆やロープ、マストなどを世界に一つしかないバッグやオリジナルグッズにアップサイクルする活動をしています。
ヨットの帆は雨や風に強い素材なので、屋外でも使える丈夫なクッションになるのではないかという期待はありましたが、代表のAmikoさんに粉砕したテニスボールを見てもらいながら相談したところ、「粉砕して粉々になったフェルトは通常の布だと漏れてしまう可能性が高いけど、織目が細かいセイルであれば漏れないのではないか」と言ってもらえて嬉しかったです。そして、高校生ならではの挑戦を応援したいと、試作品を作ってくださることになりました。

粉砕したテニスボール。カラーと質感をどう生かすか

リセイルファクトリー代表のAmikoさんとデザインを相談
リセイルファクトリー https://resailfactory.com/
「今は試作品を作ってもらっている段階ですが、座り心地などの感想を聞いたりしながら製品化し、日本の有名なテニスコートや、グランドスラムの会場になるようなテニスコートのベンチに置いてもらえるようにアプローチをしていきたいです。いつか、テニスの聖地であるウィンブルドンのコートに僕のクッションを置いてもらうのが夢です」と春山さん。
テニスが大好きで、「ボールを捨てるのがもったいない」という気持ちから始まった、春山さんのテニスボール・リサイクル・プロジェクト。クッションだけでなく、ユースメンバーでテニスボールを使った椅子カバー作りにも挑戦しました。見た目も愛らしいし、椅子を引いた時の騒音を防いでくれます。

春山さん
「ごみ問題に対する、これじゃいけないみたいな気持ちもありましたが、自分で行動してみたら、もっとやってみたいという気持ちに変化してきました。今後は、資金も調達して、この活動を鎌倉から神奈川県、全国、世界へと広げていきたいです。
この活動を始めたら、ゴミフェスのメンバーや、さまざまな企業や大人が応援してくれました。高校生活を送っているだけでは出会えなかったような人と話したり意見をきいたりして、理解できるようになったのは、自分の中の成長かなと思います」
春山さんのプロジェクトがどんなふうに進行していくのかは、このページでも伝えていきます。
(構成:編集部)
春山 義之介

ゴミフェス532ユースチーム
吉仲 遼さん(湘南学園高校3年)



竹チップコンポストを広め、放置竹林をなくしたい!
竹チップコンポストを広め、
放置竹林をなくしたい!
生ごみと竹チップを混ぜ、微生物の力でたい肥を作るコンポスト。でも、そのコンポストが使われていない…。それなら使いやすくしようと、コンポストの温度や湿度を測るセンサーを搭載した管理デバイス『みえるん』を仲間と開発した。

放置竹林問題を解消するには、竹の需要を増やせばいいと、竹プロジェクトを開始。コンポストに竹チップが使えることを知った。これが広まれば、竹の活用が進むかも!?
気になったらまず行動
高校1年生のころ、中高生の仲間5人と一緒に「みえるん」を作りました。コンポストの土中の水分量や温度、湿度を測れる機器で、センサーとマイコンボードと呼ばれる小さなコンピューターをつなげたものです。もともと子どもの頃からものづくりが好きでしたが、開発の一番の理由は、放置された竹林の問題が気になっていたからです。
僕が住んでいる鎌倉には身近に竹林がありますが、最近は伸びた竹を切ってくれる人が減っています。プラスチック製品が増え、竹を使いたい人が減っているからです。でも竹は地面に浅く広く根を張るので、伸びたまま放置すると土砂崩れの原因になってしまいます。

放置竹林が気になり、調査を開始。竹を切る吉仲さん。
放置された竹林をどうにかしたいと考えていた頃、生ごみと竹を細かく砕いた「竹チップ」を混ぜるコンポストがあることを知りました。「これが広まれば、竹の利用が進む」と思いましたが、コンポストは温度や水分量の調整が難しく、においが出たり、虫が発生したりして使うのをやめてしまう人もいます。そこで土の環境が数字で分かる「みえるん」を作れば、多くの人が家庭で手軽にコンポストを使えると思いつきました。
鎌倉では家庭から出るごみの4割が生ごみです。だから生ごみをたい肥化するコンポストがもっと広がれば、ごみを大きく減らすことにもつながります。
僕はみんなのアイデアを図や文章にまとめたり、「みえるん」のデザインを担当。プログラミングが得意な子はアプリの仕組みやコードを書いてくれたり、役割分担しながら協力して作り上げた成果です。

「みえるん」は鎌倉の問題をものづくりで解決する「ファブクエスト」というコンテストで、2023年度の最優秀賞を受賞しました。
「みえるん」ができるまで https://fabble.cc/tanabenanaha/mierun
課題だと思うことがあれば、実際に自分の手や足を使って探求するのが僕の行動原理です。受験が終わったら「みえるん」を実際に製品化して、大学でも竹林の問題について研究を続けていきたいです。
(構成:編集部)
吉仲 遼

ゴミフェス532(ゴミ二ティ)代表 平野リエさん

私たちとごみ——鎌倉市の場合
19.5%――
この数字が何を表しているかわかりますか? 日本で1年間に出されたごみのうち、資源としてリサイクルされた割合の全国平均です。ごみの5つに1つしか資源として再利用されていないことになります。
これに対して、神奈川県鎌倉市のごみのリサイクル率は58.5%。これは日本の10万人以上の市の中でナンバーワン。市民の「環境を守ろう」という意識が強いのです。
(独)国立科学博物館
鎌倉でごみ問題への関心がより高まったのは、7年前。鎌倉市由比ガ浜海岸にシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられた(ストランディング)ことがきっかけでした。クジラの赤ちゃんは母乳しか飲めないはずなのに、胃の中からプラスチックごみが見つかったのです。
誰かが海に捨てたプラスチックごみは、川から海へ流れ込み、海の生き物がえさと間違って食べて傷ついてしまいます。この出来事の後、神奈川県や鎌倉市は「リサイクルされないプラスチックごみを2030年までになくす」と宣言しました。



知っていますか? 世界のごみ事情
日本にあるごみの焼却施設は1000基以上。実は世界の焼却施設の3分の2が日本にあるのです。では、世界ではごみをどう処理しているのでしょうか? 日本は面積が狭いのでごみを燃やしていますが、面積が広い国は埋め立てがほとんど。開発途上国では「オープンダンプ」と言って、ごみを山積みにして終わりのところもあります。
日本を含む世界各国は、プラスチックごみを途上国に輸出しています。途上国はごみを受け入れて、収入源にしているのです。「ごみを処理する仕事が生まれるのでいい」と言う人もいますが、本当にそうでしょうか? 先進国が出したごみを、お金をかけて途上国に送るというのは、いいことではありませんよね。
鎌倉市もごみの半分以上が資源にリサイクルされていますが、ごみはまだまだたくさんあります。「ごみは誰かが処理してくれるから大丈夫」ではありません。ユースチームの中高生たちにも、自分が興味があるごみ問題があったら、どんどん調べてみようと声をかけています。みなさんもごみのこと、一緒に考えてみませんか。

「ゴミフェス532」のイベントで行われた子ども会議のようす

みんなのゼロウェイスト宣言
(構成:編集部)
平野リエ
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2025年秋号(No.11)に掲載したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。