ETHICS for YOUTH
2025年夏号


[評]氷菓の色に染まった舌が見えるのは、口を開けて笑っているから。三人の関係性を最少の描写で表現しました。


[評]「ショートケーキ」という物の選択が成功しています。上の句から下の句への意外な展開もひきつけます。


[評]「のよう」 でなく「でした」と言い切る比喩の技法が効いています。太陽だから形がくずれても輝きは失われません。







夏と聞いて何を思い浮かべますか。ぎらつくガードレール、日焼けして皮のむけかかった腕、サイダーの泡、夜風に鳴る風鈴……。作者の心に浮かぶものは、すなわち読者も思い浮かべるもの。それらの力を最大限活用しましょう。作品には何か「具体的な物があると強い」と私はよくお伝えしています。
「具体的な物」とは、初めに例示したガードレールなどのことです。読者と共有できる「物」があると、それをとっかかりに、作品に込めた思いも読者と共有しやすくなるのです。万物が生命力に溢れる夏は、若さのただ中にいる人にとっては「成長痛」の時期。この時にしか書けない思いを文字にしましょう。
コメンテーター
エッセイスト
岸本葉子
さん
神奈川県生まれ。食や暮らし、旅のエッセーのほか、俳句にまつわる著書も多数。『俳句、はじめました』『NHK俳句 岸本葉子の「俳句の学び方」』など。

イラスト:髙田茂和
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2025年夏号(No.10)に掲載した記事に加筆したものです。
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