青春時代に輝くというのが、どういうことをいうのかわからないのですが、ぼくは青春時代もいまも輝いているという実感はありません。学校はいきたくない場所だったし、いまでもうちで、こつこつと英語の本を読んで、おもしろい本を見つけては、翻訳するという仕事をしているわけで、どうみても地味です。中高の時代、ときめく経験があったのかというと、まあ、ないことはなかったものの、女の子とのつきあい方がまったくわからず、じつにださい男の子でした。いまでも思い出すと悔しくてしょうがありません。後で悔やむことを後悔といいますが、後悔先に立たず、というか、後悔は役にも立ちませんでした。
一方、妹のほうは小中高と学校が好きでした。とくに高校生になってからは好き放題やっていて、女の子の友だちも多く、男の子にももてて、楽しかったようです。高校生のとき、中間・期末試験の前になると、英数国のよくできる男子や女子を集めて、予想問題とその解答を作ってもらい、それをうちで印刷してもらって(実家は印刷屋で、妹は従業員と仲がよく、親に内緒でそういうことをやってもらっていました。もちろんまだコピー機などのない時代です)、希望者に売って、その売り上げでみんなといっしょに夏は海へ、冬はスケートリンクなどに遊びにいってました。そのうえ、しょっちゅう授業をさぼっては、電車に乗って倉敷の大原美術館とか民藝館に遊びにいってました(あ、そうそう、ぼくも妹も岡山市出身です)。大学に入ってもろくに授業には出ないで、それでも四年で卒業して岡山に帰って結婚し、そのうち現代作家専門の大きなギャラリーを作って数年間、じつにいい仕事をしたのですが、四十五歳で癌で死んでしまいました。
「おまえさあ、中高時代、輝いてたと思う?」と、いつかきいてやりたかったのですが、それができないのが残念でしょうがありません。
しかし、青春や未来や人生を考えるとき、「輝き」という言葉にふたをしてみると、それまで見えなかった光が見えてくるかもしれません。
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(構成:編集部)
金原瑞人
金原瑞人さん
1954年岡山市生まれ。法政大学名誉教授・翻訳家。『動物農場』『豚の死なない日』『青空のむこう』『国のない男』「パーシー・ジャクソン・シリーズ」『さよならを待つふたりのために』など、訳書は650点以上。児童書、ヤングアダルト小説も多い。エッセー集に『サリンジャーに、マティーニを教わった』『翻訳エクササイズ』など。「10代がえらぶ海外文学大賞」選考委員。


『青空のむこう』文庫版
アレックス・シアラー/著
金原瑞人/訳
(求龍堂)

『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』
J・D・サリンジャー/著
金原瑞人/訳
(新潮文庫)

10代がえらぶ海外文学大賞
10代が主人公の面白い海外文学を、10代のみなさんの投票で選ぶ文学賞です。前年に出版された、10代を主人公とする海外(翻訳)文学の中から受賞作品を選定。2025年に開催された第1回では、これらの作品が選ばれました。
https://www.10daikaigaibungaku.com/
大賞●『ソリアを森へ』
チャン・グエン作 ジート・ズーン絵
杉田七重 訳
(鈴木出版)
特別賞●『闇に願いを』
クリスティーナ・スーントーンヴァット作
こだまともこ・辻村万実 訳
(静山社)
写真:石川真魚 イラスト:希美
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2025-26年冬号(No.12)に掲載したものです。
























