「自分らしさ」とは?

 今回のテーマは、「自分らしさ」。最近、「自分らしさを大切に」とか、「自分らしさを生かして」という言葉をよく聞くようになりました。そうそう、「ありのままの自分」なんていう言葉もありますね。でも、そこでは、「ありのままの自分」とか「自分らしさ」というものが、確かに存在するということが前提になっています。さて、本当にそうなのでしょうか。

 これに関して作中に隠れている問いは、「本当に自分のことは自分が一番分かっているのだろうか」。そしてもう一つ、「自分が自分を知らないのだとすれば、他人が自分のことを知っていることになるのか」という問いです。

 この二つの問いに答えるのはとても難しいところですが、マキとカイは、「自分と他者の間にある自分」について考えてみるという作戦を取ったようです。とてもユニークな考え方ですね。

 さて、最後に次のような問いを考えてみるのはどうでしょう。カイの言うように、「自分とは周囲との関わりの中で常に変化していく」ものなのだとすれば、「10年前の私」と「今の私」とは、全く異なる存在なのでしょうか。それでも「私は私だ」といえる何か「本質」のようなものがあるのだとすれば、それは何でしょうか。

作・監修
堀越ほりこし耀介ようすけ

東京大学UTCP上廣共生哲学講座 特任研究員 / 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(PD)。東京大学教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門は、教育哲学・哲学プラクティスで、特にジョン・デューイの哲学思想、「子どもとする哲学(P4C)」/ 哲学対話の理論を研究。実践者としては、学校教育の場から、自治体・公共施設、企業・社員研修まで、幅広く哲学対話や哲学コンサルティングを行う。著書に『哲学はこう使う――哲学思考入門』(実業之日本社)、「哲学で開業する:哲学プラクティスが拓く哲学と仕事の閾」(『現代思想』(青土社)2022年8月号)などがある。

作・監修:堀越耀介 マンガ:佐倉星来

※このマンガは『ETHICS for YOUTH』2023年秋号(No.3)に掲載したものです。