正しさ/正義って何だろう?
今号のテーマは、正しさ/正義。対話の中では、「善さ」「正しさ」「正義」のほかに「不公平」なんていう言葉も出てきたようです。ちょっと捉えどころが難しいテーマだったかもしれません。
「自分の努力や意志で変えられないことを悪く言うのは善くない」というマキの主張、そもそも「自分の努力や意志で変えられる」という考えも怪しいというカイの意見もありました。努力できるかどうかも環境によって決まっているかもしれないとか、「かわいい」と言われて嫌な人がいるかもしれないというのは、面白い発見でしたね。
そして、結局「人それぞれの正しさがあるだけ」となりそうなところ、みんな諦めることなく「正しさの基準」を探っていったようです。アキラは、いろんな提案があるたびに、「それが正しいよ」と早合点していましたが、気持ちはよく分かります(笑)。どれもよく聞く、そして一見すごく正しそうな意見だからです。
でも、どれだけ正しそうな基準や格言にも、必ず欠点があるということは意識しておくといいのかもしれません。そして、それにもかかわらず、社会ではどれか一つの、あるいは、相反するかもしれない基準を交ぜて使っているようなことがありそうです。このことをどう考えればよいでしょうか。
結局、対話の中でもどれが一番いい基準なのかということは分からないまま。でも、明確に分かったこともあります。それは、理由なく、問いや話し合いを拒否することは不正だということです。
「人それぞれ」という言葉、便利でつい使ってしまいがちですが、実は考えることや対話、問いかけを放棄するために使われていないかどうか。そして、人それぞれでいいことと、そうでないことの違いを考えた上で使われているかどうか。そのあたりを考えることから、正しさを考えることは始まるのかもしれません。
堀越耀介
作・監修
堀越耀介
東京大学UTCP上廣共生哲学講座 特任研究員 / 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(PD)。東京大学教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門は、教育哲学・哲学プラクティスで、特にジョン・デューイの哲学思想、「子どもとする哲学(P4C)」/ 哲学対話の理論を研究。実践者としては、学校教育の場から、自治体・公共施設、企業・社員研修まで、幅広く哲学対話や哲学コンサルティングを行う。著書に『哲学はこう使う――哲学思考入門』(実業之日本社)、「哲学で開業する:哲学プラクティスが拓く哲学と仕事の閾」(『現代思想』(青土社)2022年8月号)などがある。
作・監修:堀越耀介 マンガ:佐倉星来
※このマンガは『ETHICS for YOUTH』2024年春号(No.5)に掲載したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。