「人を好きになる」とは?
今回のテーマはズバリ、「人を好きになる」こと。そういう経験がある人もない人も、どちらもいてまったく構わないわけですが、学校で哲学対話をすると、考えてみたい問いとしてよく挙げられます。よく考えてみると意外と難しいし、実は哲学的な問題としても、非常に古くから考えられてきた問題の一つです。
アイとマキの対話の論点は、大きく分けて2つになるでしょうか。①好きとは、性質や条件の総体なのかどうか。②「好き」とそれに関するルールや気づかい、演じることとの関係はどうなっているのか。さて皆さんは、どのように考えたでしょうか。
「好き」とひと言に言っても、いろいろな種類の好きがあるのかもしれません。たとえば、「人として」、「友だちとして」、「恋愛として」好きは、同じでしょうか。もし違うのだとすれば、どう違うのでしょうか。あるいは、物や動物(ペット)に対する好きと、人間に対する好きは同じですか。もしかすると、アイデアや概念(それがどういうものかという考え)といった「抽象的なもの」を好きになることもあるかもしれません。
そして、好きになったら(なられたら)、私たちの自由は、どのように/どれだけ制限されるべきなのでしょうか。それは社会のルールのようなものに従うのか、お互いの合意の問題なのか、あるいはそもそも制限などすべきではないのでしょうか。哲学の謎はまだまだ尽きませんね。ぜひ、考えてみてください。
作・監修
堀越耀介
東京大学UTCP上廣共生哲学講座 特任研究員 / 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員(PD)。東京大学教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。専門は、教育哲学・哲学プラクティスで、特にジョン・デューイの哲学思想、「子どもとする哲学(P4C)」/ 哲学対話の理論を研究。実践者としては、学校教育の場から、自治体・公共施設、企業・社員研修まで、幅広く哲学対話や哲学コンサルティングを行う。著書に『哲学はこう使う――哲学思考入門』(実業之日本社)、「哲学で開業する:哲学プラクティスが拓く哲学と仕事の閾」(『現代思想』(青土社)2022年8月号)などがある。
作・監修:堀越耀介 マンガ:佐倉星来
※このマンガは『ETHICS for YOUTH』2023-24年冬号(No.4)に掲載したものです。