[ 特集 ]新しい私にHello!

大人気サッカー・アニメ『ブルーロック』。その主人公、潔世一いさぎよいち役を演じているのが浦和希さん。「声優になろう」と決意したのは、高校2年生の冬のこと。思うようにならなかった時間と、それでも努力を続けた時間。そのすべてが、声優「浦和希」をつくりあげました。

 「『ブルーロック』は、ジェット飛行機のようなもの。見たことのない景色が広がる場所にまで、僕を運んでくれました」

 そう語るのは、浦和希さん。2022年に『ブルーロック』の主人公、潔世一役で注目を集め、一躍いちやく人気声優に。23年度の声優アワード主演声優賞を受賞し、その後も『桃源暗鬼とうげんあんき』など主演作品が続きます。

 潔世一の声そのままに、明るく受け答えをしてくれる浦さんですが、どんな中高生時代を過ごされたのでしょうか。

 「空手や水泳など、小さい頃から習いごとをしていたので、体を動かすことは好きだったのですが、人に話しかけるのは苦手でした。ゲームが好きだったので、プログラムを組んで自分で作ったりしていました」

 「声優になりたい!」と決意したのは、高校2年生の冬。情報系の高校に進み、プログラミングを勉強していましたが、大学受験を控えてナイーブになっていた頃、友だちが勧めてくれたアニメがきっかけでした。

 「キャラクターがかわいいと思って見始めたら、主人公の『あきらめないでください』というセリフに心を動かされて。『ここで腐っちゃダメだ』って素直に思えたんです。この記憶がずっと残っていて、高3になって『自分が本当にやりたいものってなんだろう』と考えた時に、『こんなことができる人間になりたい』と思うように。どんな職業にけばいいのか調べ、僕が一番心動かされたのが“セリフの力”だったので、『セリフを言う人になりたい』、そうだ『声優だ!』と」

 最初は親からも反対されましたが、大学を卒業することを条件に声優を目指すことを認めてもらい、大学入学と同時に上京し、声優の養成所にも通い始めました」

 夢いっぱいの日々が始まりましたが、思ったようには進みませんでした。

 「日本映画をよく観ていたので、好きな芝居の型があり、芝居はできるという謎の自信があったんです。でも、実際やってみたら全然うまくいかない。現実を知りました」

 オーディションにも呼ばれず、受けても落ちてばかり。周りの友だちが次々と活躍していくのを見て、「僕は才能がない側なんだな」と思ったこともあったと言います。それでも努力し続けたのはなぜだったのでしょうか。

 「悔しかったからです。区切りがつくところまでやらないと気がすまない性質なので、『今に見てろよ』という気持ちで頑張っていました。

 一緒に声優を目指していた友だちの存在には助けられました。ご飯を食べた帰り道に、家を通り過ぎているのに、『こういうお芝居をしたいんだよ』って話が止まらなくて。励まし合ったことに支えられていたんだなと思います。

 事務所の先輩の梶裕貴さんの言葉にも力をもらいました。声優としてのあり方の悩みを聞いてもらった時に、梶さんが『浦くんなら大丈夫だよ』と言ってくれたんです。実は、梶さん自身も同じように先輩に相談し、『大丈夫だよ』と言ってもらって救われた経験があったのだとか。その言葉を僕に渡してくれたんだと思って、『もう一回頑張ってみよう』と迷わずやっていたら、すぐ後に仕事が決まったんです。それが初主演作『ブルーロック』でした」

 「声優をやっていて思うのは、芝居にはその人の人生が乗るということ。声優は作品のために芝居をしますが、キャラクターを演じる時には、僕の癖や考え、エッセンスが入ってきます。

 人生って山もあれば谷もあるし、誰一人同じじゃない。だから、僕の人生を歩んできたということが僕の強みになるのかな。以前はうまく答えられなかったんですけど、『浦和希であること』が僕の強みだと、自信を持っていこうと思います」

 「みんないろんなことに悩んでいると思います。でも、答えって意外と自分の中にあったりします。僕が中高生の頃は、なんとなく過ごしていた時期があって、やっておけばよかったと思うことがたくさんあります。その一つが『全力で何かに打ち込む』こと。ゲームでもいいし、何でもいい。全力で打ち込むのってカッコいいし、積み上げたものは無駄にならない。絶対に後から役に立ちます。

 何かを続けることも大事だと思います。何でもいいんです。僕は小さい時から母親にあいさつだけはするように言われていて、大学時代は、毎日守衛しゅえいさんにあいさつをしていました。卒業間際には守衛さんが『4年間お疲れさまでした』と声をかけてくれ、本当にうれしかった。

 皆さんも、自分の気持ちに素直になり、10代を思い切り楽しんでください」

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特装限定版Vol.1
(第25話~第31話収録)

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発売・販売 バンダイナムコフィルムワークス
©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会

『ブルーロック』にめぐり合って、
「ブレイクした!」という実感はあった?

 まだまだもっともっと上があるので、「ブレイクした!」とは思わなかったんですけど、自分の生活が一変したなとは思いました。仕事が一気に増えて、いろんなメディアで取材をしてもらうことも増えて、これがお仕事をするっていうことなのかと実感しました。それまで、うまくいかないことばかりだったので、自分が求められることがありがたくて、その時はもう疲労感よりも感動が勝っていましたね。
 『ブルーロック』は、僕を見たことのない景色まで運んでくれるジェット飛行機のようだと言いましたが、まだ僕は飛行機に乗せてもらっている状態なので、『ブルーロック』というジェット飛行機と並んで飛べるくらい、もっと実力をつけていきたいです。

『ブルーロック』は浦さんにどんな景色を見せてくれたの?

 最近は、海外のアニメイベントに行く機会も増え、2025年はロサンゼルスやジャカルタを訪れました。日本国内の反応はSNSや周りの感想でなんとなく分かるのですが、海外でどう受け止められているのかは分からなかったんです。だから、実際に現地に行って、たくさんのファンの方が温かく迎えてくれた時は、胸がいっぱいになりました。いい作品って国を超えるんだ! アニメってすごい! と、改めてアニメの力を実感しました。

中高生の頃、勉強は好きでしたか?

 めちゃくちゃ嫌いでした(笑)。やらされるのが好きじゃなくて。でも、本を読むのが好きだったり、学ぶこと自体は好きなんだと思います。
 中高生の頃はそんなにお金を持っていないので図書館に行ったり、教室にあるクラスの図書コーナーの本を、朝の読書の時間に読んだり。それも全部読み切ったら教科書を読んでいました。教科書を読むのって好きなんです。台本を読む時には、本を読む習慣に助けられています。

大学時代は、声優の勉強をしながら、資格も取っていたとか?

 CGエンジニア検定エキスパートと第三級陸上特殊無線技士 の資格を取りました。親から、声優を目指す時に言われたことがあったんです。一つは「大学を卒業する」こと。そして、もう一つが「国家資格を取って、手に職をつける」ことでした。
 「自分の名刺になるような分かりやすいものを何個か持っておけ」と言われていました。おかげで声優になった今も、こうして資格のことを話題にしてもらえます(笑)。僕の個性の一つになったので、取ってよかったです。大学時代はバイトもしていたので、めちゃくちゃ忙しかったですけどね。

これまでにたくさんのすてきなセリフを言ってきたと思いますが、
印象に残っているセリフは?

 素敵すてきな作品ばかりでなかなか一つに絞れないんですけど、『ブルーロック』に出てくる潔世一の「人は人を変えることはできない」というセリフです。
 それまでの自分って多責思考なところがあって、自分はそのままで、他人に変わってほしい、他人を変えたいというような気持ちが強かったんです。でも、この言葉に出合って、それは違う、まず自分が変わるんだと考えるようになりました。人にはそれぞれの生き方や信念があるのに、他人を変えようなんておこがましいし、自分が変わらなければ、他人が変わるはずがない。
 例えば、自分がすごく密接なコミュニケーションを取るタイプだとしても、それが苦手な人もいるじゃないですか。人と適度な距離を取りたい人には、こちらも適度な距離を取る。そういうことが人に対するリスペクトだなって、そんなことを大切にするようになりました。

最近のお仕事で印象に
残っているのは?

 朗読劇です。朗読は、声だけで情報を伝えないといけないので、世界観をしっかり届けるために、たくさんの感情を込めることが大事です。
 朗読というと、固いイメージがあるかもしれませんが、アニメ作品のようなファンタジー系も多いんですよ。
 世界観をしっかり届けるために、僕たちもたくさんの感情を込めますし、声だけで表現するので、想像力がすごく刺激されると思います。舞台や生の朗読って、人間が本当にやっている“生っぽさ”が魅力。その瞬間にしか生まれない“きらめき”を感じてほしいなと思います。

(構成:編集部)

生演奏朗読劇桜桃探偵舎おうとうたんていしゃ 天沼心中あまぬましんじゅう 太宰治だざいおさむ檀一雄だんかずお事件簿じけんぼ2』
2026年4月18日(土)・4月19日(日)
日経ホール(東京都千代田区)
https://ame-tsuchi.co.jp/stage_ototantei/

浦 和希うら かずき
10月18日生まれ。大阪府出身。2017年から声優として活動を始め、2022年、『ブルーロック』(潔世一役)で初主演。2023年度第18回声優アワード主演声優賞受賞。主な出演作は、『桃源暗鬼』、『シャドウバースF』、『水属性の魔法使い』など。CGエンジニア検定エキスパート、第三級陸上特殊無線技士の資格を持つ。

写真:中村嘉昭 イラスト:藤 美沖

※この記事は『ETHICS for YOUTH』2026年春号(No.13)に掲載したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。