[ 特集 ]新しい私にHello!

お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコさんは、楽しいことを見つけるのが大得意。でも、10代の頃は引っ込み思案じあんで、友だち関係に悩むことも多かったのだとか。川村さんに、自分らしさを見つけるヒントを聞きました。

 川村さんには、毎年、春になると思い出すことがあります。

 「中学1年の春、引越しで新しい学校へ転校したんです。しかもその日は入学式だったので、新入生だと紹介されなくて。教室に入ると、2つの小学校から来た子たちがいて、もうグループができていました。転校生の私はどちらにも入れなくて、気づいたら一人ぼっち。だから、先生たちに言いたいんです。転校生が合流するのは入学式からじゃなくていい。1日でもずらしてあげてって(笑)」

 友だちづくりについてはこんなエピソードも。

 「小学生の頃、Sちゃんという女の子に『友だちになりたいです』と言いに行ったんです。Sちゃんは、小学2年で『ビルマの竪琴たてごと』を読んでいた、めちゃくちゃ頭のいい子。自分が知らないことを知っていて向上心がある子とお友だちになりたいと思ったんです。

 どうすれば友だちになれるのか分からなくて、思い切って告白したのですが、Sちゃんから言われました。『試験があります』って。試験があるんだ! と驚きましたが、それなら挑むしかないと。難問続きで残念ながら友だちにはなれませんでしたけど(笑)。今何してるのかな、Sちゃん」

 『一日に一言、エミコちゃんの声が聞ければいいほうです』。お母さまが担任の先生から言われたほど引っ込み思案だった川村さん。いじめられることもありましたが、学校を休もうとは思わなかったそうです。

 「どうしても許せないことは、本人に直接『それはイヤだよ』と伝えていました。大人になって気づいたのですが、イヤなことを言われたりモヤモヤした時は、素直に『なんでそんなこと言うの?』と正面から聞いてみるのが一番。相手が知らずにしていたなら気づいてもらえるし、意地悪で言っていた人は『やば、言われた』って思うんじゃないかな。

 言葉が出てこない時は、思い切ってギャグをやっちゃいましょう(笑)。重い言葉を返すと、相手も自分もつらくなっちゃう。だから、ポップに返す。私の場合は、たんぽぽの空気を変えるギャグ『スペペぺぺ!』ですね。気にしていることを言われたら『スペペぺぺ!』。その後なら、『やめて』とか『気にしてるんだよ』って言いやすいし、気持ちが楽になります。心の中で言うだけでも大丈夫。自分が笑える魔法の言葉を作ってみてください」

 「舞台に立つ人になりたいと思っていました。劇団民藝みんげいの役者をしていた伯父が、おじいちゃんのお葬式でスピーチをした時、暗かったその場が笑いでいっぱいになったんです。舞台に立つ人ってなんてすてきなんだろう、私も空気を明るくできる人になりたいと思いました。未だに自信はないし、緊張しいなんですけど、なぜか、『絶対舞台に立つんだ』と決めていました」

 「体育館で踊っていた演劇部の人たちが想像以上にキラキラしていて、『自分にはまだ早いと尻込みしてしまったんです(笑)。まずは大声を出せるようになろうと剣道部に入りました。でも、部活では大きな声が出せても普段は全然出なくて(笑)。性格って、そう簡単には変わらないんだなと気づきました」

 「私もそうでしたが、中高生の頃は『自分を変えたい』と思っている人は多いんじゃないかな。でも、元の性格ってそうそう変わらない。何かやってみたいことがあるなら、“自分を知る”ことから始めるといいと思います。

 誰かと一緒のほうが頑張れるタイプなのか、一人でコツコツ頑張ったほうがいいのか。飽きやすいけど、こういうことなら飽きずにできるとか。それが見えてきたら、自分に合うやり方でやってみる。合わなかったら、やめたっていいんです。とにかく、いろんなことを試してみる。そのうちに、自分だけの『これ好きだな楽しいな』というものが見つかると思います」

 「自分のことを、無理に好きにならなくてもいいと思うんですよ。それより、自分を知って自分を大切にしてあげてほしい。

 私は10代の時、みんなみたいに盛り上がれない自分のことをよくないと思っていました。でも、ある友だちが『いつも冷静でいられるところが、えみちゃんのいいところだよ』と言ってくれて。短所だと思っていたことも、見方を変えたら長所になるんだと気づきました。イヤだなと思っている部分も、実は自分の大切な一部かもしれませんよ。

 10代のうちは、思い切り遊んで、思い切り学んでください。その中で見つけた『これ好きだな』って気持ちは、大人になっても、あなたを支えてくれます。頑張っているあなたを見ている人は、きっといてくれるはずです」

Q.好きだった映画は?

高校生の時に初めて映画館で観た洋画『ボディガード』です。ホイットニー・ヒューストンが歌う「エンダーーー!(And I)」に衝撃を受けました。「なんて言ってるの?」と母に聞いたら「あなたを愛し続けます」という意味だよと。そんなことを大きな声で言っているのかとびっくりしました。家の階段で“一人ボディガードごっこ”をして、父に注意されたのもいい思い出です(笑)。

Q.頑張った思い出は?

小学生の頃、塾で理科の問題集を1冊丸ごと宿題に出されたことがありました。とてもできないと思ったけど、初めて徹夜をして、全部解いて提出しました。でも、持っていったのはクラスで私だけでした。負けず嫌いというより、ゴールがあるとがぜんやる気が出るタイプなんです。マラソン大会でも、少しずつ距離を延ばす練習をしたり、計画を立てたりするのが好きでしたね。

「おかっぱちゃんねる」は、川村さんの公式YouTubeチャンネル。日常の出来事や好きなものの話を中心に配信中。文房具や雑貨の話もいっぱいです。コラボ企画や好きなパン屋さんをめぐる「パンTube」も人気。

始めるきっかけは、
立派じゃなくていい

 10代の子たちから「やりたいことが分からない」という話を聞くことがあります。でも、最初から分かっている人の方が少ないんじゃないかな。
 私も、演劇部をあきらめた後、剣道部に入りました。「いつか舞台に立ちたい」という気持ちはあったので、「まずは大きい声が出せるようになろう」「そうだ、剣道部だ!」と思ったんです(笑)。運動は得意じゃなかったのですが、担任の先生が顧問で「運動神経は関係ないよ」と言われて、「じゃあお願いします!」と入りました。
 今思うと、きっかけはそれで十分だったと思います。だから、皆さんにも伝えたいんです。何かを始めるきっかけって、立派じゃなくていい。「ちょっと気になる」「友だちがやってる」「先生が顧問」「推しがやってる」……。そんなことでいいと思います。
 それでもピンとこなかったら、知っている職業を書き出して、消去法で選んだっていい。「お金を稼ぎたい」という理由だって立派な動機です。大事なのは、自分がワクワクするかどうか。部活を見学したりして「また来たいな」とか「あの人に会いたいな」くらいの気持ちで十分。とにかく動いてみること。試して違ったら次に行けばいい。その中で、自分だけの「これかも」が、きっと見つかると思います。

「緊張」とのつきあい方

 私は昔から、かなりの“緊張しい”です。今でも仕事の現場ではドキドキするし、子どもの頃は、ピアノの発表会で緊張しすぎて「弾いているフリ」をして終わったこともあります(笑)。母には「あんた、フリしてたでしょ」と、しっかりバレていました。
 でも、緊張は悪いものじゃありません。それだけ本気で向き合っている証拠。準備してきたからこそ緊張するんだと思えるようになってから、緊張が少し味方になりました。
 私が大事にしているのは、「緊張をなくそう」とするより、「楽しもう」に切り替えること。緊張すると意識が自分に向いてしまうので、周りの人の話を聞いて楽しむようにして、気持ちの矢印を外に向けるようにしています。
 もう一つ大事なのが、自分がどんなタイプかを知ること。私の場合は、リハーサルの時に「これは本番だ」と思い込んでやると、本番の緊張が少しやわらぐタイプだと、経験から分かりました。緊張との向き合い方は人それぞれ。だから、悩むより、まずはやってみる。試して、動いてみる。そうやって進んでいけば、自分のことや次の景色が見えてきて、絶対に先に進めますから。

答えは自分の中にある

 芸人になったばかりの頃の私は、「芸人は明るくなきゃいけない」「面白い人でいなきゃダメだ」と、ずっと思い込んでいました。だから、おかっぱ頭を生かして“こけしキャラ”をやってみたり、自分なりに「それっぽい明るさ」を必死につくっていたんです。でも、ちょっと無理してました(笑)。
 その頃は事務所内で毎週ネタ見せがあって、ある日「20歳になればきれいになれると思ってた」と言って倒れるネタをやったんです。自分の本音をそのまま出しただけだったのにそれが意外にウケて、「ネタって、普段思っていることでいいんだ」「自分の中にあるものを出していくことが大事なんだ」と気づきました。
 「答えって、自分の中にあったんだ」。そう思ってから、ネタ作りが一気に楽しくなりました。毎日10個ずつネタを考えて書きためたのがノート1冊分あります。そこから生まれたのが、「私は今日、Tバック」のような私の一言ネタ「川村エミコの怖い話」です。この時に作ったネタは、今でもロケの自己紹介などで使っています。
 今思うと、あの時の気づきは、仕事だけじゃなく生き方にもつながっています。「こうあるべき」より、「自分はどう感じているか」。
 だから、今やりたいことが分からなくても、自信がなくても、迷っていても大丈夫。答えは、案外もう自分の中にあったりしますよ。

(構成:編集部)

『わたしもかわいく生まれたかったな』川村エミコ(集英社)

川村かわむらエミコさん
1979年生まれ。神奈川県出身。お笑いコンビ「たんぽぽ」のメンバー。テレビやラジオなどで活躍するほか、YouTubeやエッセーの執筆など、活動の幅を広げている。著書に『わたしもかわいく生まれたかったな』など。

写真:中村嘉昭 イラスト:藤 美沖

※この記事は『ETHICS for YOUTH』2026年春号(No.13)に掲載したものです。
※コラムはウェブオリジナルです。