頑張るのはカッコ悪いなんて誰が言ったの? 悩んで苦しんで、笑って泣いてみんなで力を合わせる、この時が青春―アオハル!ユース世代の「甲子園」―ナツのチャレンジを応援します。

第27回大会で優勝した名古屋高校A
写真提供:NPO法人俳句甲子園実行委員会

愛媛県松山市で毎年8月に開かれる俳句コンクール「全国高等学校俳句選手権大会」。参加は5人1組。団体戦は、2チームが赤白に分かれて1句ずつ句を出して競い合う。予選を勝ち抜いた32チームが熱い戦いを繰り広げます。

第17回大会で優勝した帝塚山学院高校
写真提供:一般社団法人ストリートダンス協会

高校・中学校ダンス部の各日本一を決める公式大会。「ダンス甲子園」「ダンススタジアム」とも呼ばれる。スモールクラス(2~12人)とビッグクラス(13~40人)に分かれ、全国10地区での予選を勝ち抜いたダンス部が、全国大会で日本一を競う。

第72回大会銀賞。柏市立柏高校
写真提供:フォトライフ

「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる吹奏楽部員たち憧れの舞台。7月頃から予選が始まり、全国大会は10月下旬に開催される。課題曲4曲の中から1曲を選び、自由曲と合わせて12分以内に演奏を行う。


きっとチャレンジしたくなる
高校野球に負けないアツい夏が、今年もさまざまな大会で繰り広げられます。出場する人はもちろん、応援でもアオハル気分を味わいましょう。



俳人・詩人 佐藤文香 さん
1985年兵庫県生まれ、愛媛県育ち。13歳で俳句を始め、句集に『海藻標本』(第10回宗左近俳句大賞)、『君に目があり見開かれ』、『菊は雪』、『こゑは消えるのに』。2014年頃から詩も書くようになり、『渡す手』にて第29回中原中也賞。編著に『俳句を遊べ!』、『天の川銀河発電所』、共編著に『おやすみ短歌』など。作詞や句集の編集協力等も手がける。


第27回大会(2024)

佐藤文香さんが出場し、準優勝した「俳句甲子園」で(前年は優勝)。この時の仲間たちとは今も親交がある。
なぜ俳句だったの?
子どもの頃は、スポーツやコーラスが大好きで習い事をかけもちするタイプ。俳句を作るなんて考えたこともなかったです。
小6で引っ越した愛媛県松山市は俳句がさかんな街。中1の時に、テレビの取材で教室に俳句ポストが置かれました。人が思いつかないようなことを書くのが楽しくて投稿をすると、俳人の先生から、面白い言葉が返ってくる。それが楽しくて、だんだん俳句にハマっていきました。

俳句でバトルするってホント?
対戦校とは、互いの俳句に質疑応答をします。これが熱いバトルに。勝ち抜くためにディベートの特訓をしたり、戦略を立てて戦うスポーツ競技のような要素もあります。静かに考えるのが苦手な私は、大会前日には宿舎で壁倒立をしながら俳句を作っていました。高1で団体優勝し、高2では準優勝でしたが、「夕立の一粒源氏物語」が最優秀句に。『源氏物語』を読んだことがなかったのは今も笑い話です。

自分にしかできない句がある
青春と感じるのは振り返った時。大会に出たことで思い出がたくさんできたし、俳句の友だちができました。兼題が発表になると、季語を理解するために、みんなで動物園に行ったり、自然を観察したのも楽しかったな。
俳句甲子園に出場したことは私にとって人生の一つの通過点。でも、思えば俳句で人生を駆け抜けてきました。
17歳の自分にしかできなかった経験があって、今があります。その時の自分だけが作れる俳句があります。ずっと後になってよさが分かったりすることもあるから、面白いです、俳句って。
俳句にチャレンジしたい人へ
俳句甲子園に向けて集中している時、自分を俯瞰する視点を持つと、頑張る自分の尊さを確認できると思います。大会に出場することが高校生活の全てじゃないし、負けたとしても決してダメな人じゃないです。大きな目標に向かって頑張ったことは価値のあることと考えましょう。
第28回俳句甲子園
6月14日から地方大会が始まり、8月23・24日に全国大会が愛媛県松山市で行われます。
https://haikukoushien.com/



関西大倉高校ダンス部顧問
木下ひなた さん
和歌山県橋本市に生まれる。筑波大学体育専門学群卒業。中学高校時代は、大阪の帝塚山学院ダンス部で活躍。ダンスの全国大会の優勝に貢献した。2021年から関西大倉高校の体育教諭、ダンス部顧問をつとめる。2022年夏、関西大倉高校のダンス部が全国大会出場2回目にして2位に入り、熱き指導者として注目を浴びている。



関西地区予選突破に向け、今年の作品を作る関西大倉高校のダンス部員たち。大会では、部員全員で舞台に立つ。
忘れられないナツの思い出
高1の夏です。中学高校と、強豪といわれる帝塚山学院ダンス部の部員でした。優勝を目指して頑張ったのですが、予選大会で敗退してしまったんです。高校生活で一番悔しかった。でも、「こんな経験はもう絶対したくない」という気持ちになり、より深くダンスと向き合うように。キャプテンにもなり、みんなに嫌われてもいいと思って厳しくしていました。高2の夏にベスト8に入った時は、本当にうれしかった。

なぜダンスだったの?
クラシックバレエは3歳から習っていましたが、ダンスを始めたのは帝塚山学院に入学してから。大学でもダンスを続け、関西大倉高校ダンス部顧問になりました。
ダンスには、正解、不正解がありません。思うように創作し、表現することができる。関西大倉では、作品のテーマを考え、音楽を選び、振り付け、衣装作りと、全員で作品を作り上げていきます。そして、体と心を解放して踊る。それが創作ダンスの一番の魅力です。

目指すぞ、高校日本一
関西大倉高校の部員は、ダンス未経験の生徒がほとんど。なのに、4月に入った新入部員が6月の予選ではもう全員舞台に立ちます。進学校で部活の時間も限られているので、先輩が後輩に教えたり、短時間でも密度の濃い練習でカバーしています。
かわいく見せたい盛りの子たちが、髪が乱れているのも忘れて体で表現し、うれしくて抱き合ったり、悔しくて泣けるって、めっちゃ青春やんって思います。この夏の目標は、ダンススタジアム優勝です。関西大倉高校ダンス部にしか魅せられない世界観を、会場でぶつけたいです。
チャレンジしたい人へ
中高生の頃は、一番体力がある時。「これやったらどうなるかな?」なんて考えないで、興味があることが見つかったら、突き進んでみるといいと思う。全力でやって、全力で失敗することもあるかもしれないけれど、それはきっと自分の経験につながっていくと思います。
第18回日本高校ダンス部選手権
夏の公式全国大会は、7月24日から8月7日まで地区大会、8月19日・20日に準決勝大会、9月7日に決勝大会。
https://www.dancestadium.com/



吹奏楽作家 オザワ部長 さん
神奈川県出身。世界でただ一人の吹奏楽作家。全国の吹奏楽部・楽団を取材して、吹奏楽の素晴らしさを発信し続けている。吹奏楽部時代はサックス担当。近著に『吹部ノート』『空とラッパと小倉トースト』など。



第72回全日本吹奏楽コンクールに出場した柏市立柏高校吹奏楽部。気持ちを一つに、今年も挑戦。
吹奏楽の魅力って?
みんなで一つの音楽を作る楽しさと難しさを経験できることです。高校のコンクールなら55人もの演奏者がいて、たくさんの楽器がある。曲の理解のし方や進み方も人によってバラバラ。それでも同じ目標に向かって、少しでも前進していく。部活でしか体験できないことだと思います。
僕も中学時代は吹奏楽部員でした。大学時代に磨いた文筆の技術を生かし、架空の吹奏楽部の部長というキャラ設定で、全国の吹奏楽部員を応援するようになりました。

コンクールに挑む中高生たち
コンクール用の楽譜を見たことはありますか?♯や♭が付いた音符がズラッと並んでいます。見た瞬間にはみんな「絶対に無理だ」って思うんです。でも、「やるしかない」。テンポを指定の半分以下に落とし、時間をかけて1音ずつ、1小節ずつ練習していくと、できるようになるんです。
時には部員同士でけんかになることも。でも、最後は音楽でつながり合える。仲間たちと過ごした日々は、最高に輝く青春だと思います。

12分間にかける青春
「全日本吹奏楽コンクール」は、7月頃から各地で地区予選がスタート。さらに都道府県大会、支部大会を勝ち抜いた中から選ばれた代表(高等学校の部は30校)だけが、10月の全国大会に出場することができるのです。
演奏時間は、課題曲と自由曲の2曲を合わせて12分以内に収めるのがルール。吹奏楽部員は、この“12分間”の演奏にすべてをかけて練習に励みます。
大会では、奇跡のような演奏でホール全体が燃え上がることも。練習の過程も、舞台での演奏も、仲間との絆も、すべてがキラキラ輝く宝物です。
チャレンジしたい人へ
一人ではうまく演奏できなくても、みんなと一緒なら勇気を持って取り組める。仲間の支えがあるから、「もう限界」と思った壁を越えられる。結果がどうであれ、金賞に値する努力、頑張り、青春がある。一生懸命に頑張った先には、人生の糧となる宝物が得られるはずです。
第73回全日本吹奏楽コンクール
中学生の部は10月18日、高等学校の 部は10月19日、大学の部は10月25日に開催されます。2025年度課題曲は「Rhapsody 〜 Eclipse」など4曲。


今でこそ、皆さんにキャリアの積み重ね方をアドバイスしていますが、キャリアコンサルタントとして活動するようになったのは、会社勤めをしてから結婚して専業主婦になり、2人の子どもを育てた後のこと。
私も、若かった頃は、なりたい自分を見つけられなくて迷ってばかり。10代の頃に、なりたい自分を見つけてチャレンジしていたらどうなっていただろうと考え、後悔したことが何度もあります。
そんな遠回りをした経験があるので、中高生の皆さんには、なりたい自分を見つけて、少しでも前向きに生きられるよう手助けできたらと思っています。
■「書く」ことで分かることがある
自分をよく知るための3つのワークシートを用意しました。ぜひ、自分の手で書き込んでみてください。
「書く」のは面倒と思うかもしれません。でも、言葉にしてアウトプットすると、ぼんやりしたイメージが整理されて、はっきりしてきます。また、書いたり話したり、行動したことは脳にインプットされるので、意識しやすくなり、その強みを伸ばすことに役立ちます。
ここでは、キャリア講座などでもよく使うワークシートを参考に、中高生向けにカスタマイズしたものを、一例として紹介します。日記やノート、スマホなどのツールを活用してもいいですね。
中高生の頃は、いろいろなことを複雑に考えがちで、ネガティブな思考に陥りやすいといわれています。でも、人生は一度きりです。できるだけ、ネガティブに生きるより、ポジティブに生きて楽しい時間を増やしてほしいと思います。ワークシートを活用して、皆さんが、なりたい自分を見つけ、次の一歩を踏み出すきっかけになれば、とてもうれしいです。
(構成・編集部)

安部博枝

安部博枝さん
キャリアコンサルタント。株式会社abilight代表取締役。明治大学客員研究員。大手自動車メーカーを退職後、専業主婦を経て、2015年に起業。心身共に前向きに生きるためのキャリア教育・人材育成の普及に努めている。著書に『自分のことがわかる本』がある。

『自分のことがわかる本』安部博枝(岩波ジュニア新書)
イラスト:藤 美沖
※この記事は『ETHICS for YOUTH』2025年夏号(No.10)に掲載したものです。