イラスト:アベカサネ
入選作と選評


「これも最後か」が効いています。別れの近いことがわかり、その前の言葉までで描いている日常的なシーンとの落差に、胸を突かれます。



意識して変なテンションになってしまった。不器用な恋の初々しさと切なさを、効果的に伝えています。



自分への問いかけがあります。感情だけに流されない理性のきらめきを感じます。作者はすでに大人への出口にいます。










エッセイスト
岸本葉子さん
神奈川県生まれ。食や暮らし、旅のエッセーのほか、俳句にまつわる著書も多数。『俳句、はじめました』『NHK 俳句 岸本葉子の「俳句の学び方」』など。
少ない言葉で
「刺さる」作品にするには?
作品では少ない言葉で、思いを読み手に届けることになります。音数の決まっている俳句や短歌(字数といわれることが多いですが、正確には音数です)はもちろん、詩やつぶやきも、小説と比べればずっと短いです。逆に言うと、小説のように長い時間をかけて読んでもらわなくても、瞬時に読み手の心に「刺さる」のが、これらのジャンルならではと言えます。
少ない言葉で作るとなると、何を言わずにおくかが考えどころです。無理な省略をするのはよい選択ではありません。「十ボトル満たす涙」という表現を例にとりましょう。「ボトル十本」だと音数がかさんでしまうので、節約して「十ボトル」にしたかと思いますが、ここはきっちり「ボトル十本」と言いたいです。「十ボトル」は、ふつうはしない言葉のつなげ方なので、読者はとまどい、すぐには共有できなくて「十ボトルというボトルが、私は聞いたことがないけど、あるのだろうか」「いや、十本ということか」とわかるまで時間がかかります。それだと瞬時に「刺さる」という、短いジャンルのよさを生かせなくなってしまうのです。
ふつうはしない言葉のつなげ方、と述べました。では、ふつうにする言葉のつなげ方とは? 文法です。さきほどの例でいえば「十本」というボトルの数え方です(十という数に、「本」という数えるときの言葉、数詞をつなげています)。
文法というと、感性ののびのびした発動を妨げる、きゅうくつな規則のような印象がありますが、むしろ「刺さる」力を支えるものと考えて下さい。作者の思いをスピーディーに、かつ確実に、読者に届けることができます。ゲームにおけるルールと似ています。ルールを共有することで成立するし、楽しめるのです。




































